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10.82021
一般社団法人とNPO法人の違い

これから、一般社団法人かNPO法人の設立を考えているけど、どういった違いがあるんだろう。
こういった疑問にお答えします。
本記事のテーマ
自分たちにあった法人格がどちらなのかの判断材料にご活用ください。
一般社団法人もNPO法人も非営利法人!
まずはじめに、一般社団法人もNPO法人も非営利法人です。
非営利法人というのは、収益が出ても、社員(会員)や理事に分配してはいけないという法人格のことを指します。
そのため、収益を出してはいけないということではありません。
収益を一切出してはいけないとなると事業が赤字で活動ができなくなってしまいますからね。
事業を行う上で収益が上がることは問題ではありません。非営利活動として、社会貢献にお金を使っていけばいいのです。
さて、一般社団法人もNPO法人も非営利法人で、収益を社員(会員)や理事に分配することはできないということはわかりました。
それでは、違いはどこにあるのでしょうか。
一般社団法人とNPO法人の違い
一般社団法人とNPO法人の違いは、設立の手続きから、設立に必要な役員数、期間、手数料などにあります。
違いを下記の表にまとめてみました。
一般社団法人 | NPO法人 | |
設立の手続き | 設立登記 | 所轄庁の認証後、設立登記 |
所轄庁 | なし | あり(都道府県、市区町村) |
設立に必要な役員数 | 理事1名でも可 | 理事3名以上(理事は社員、職員との兼務可) 監事1名以上(監事は社員のみ兼務可) |
設立に必要な社員数 | 2名以上 | 10名以上 |
役員の親族規定 | なし | あり |
設立にかかる期間 | 3週間程度 | 3~6か月程度 |
設立時の資金 | 不要 | 不要 |
公証人手数料 | 50,000円 | 不要 |
登録免許税 | 60,000円 | 不要 |
事業目的の制限 | なし | あり(特定非営利活動を主目的) |
社会的信用 | 低い(共益) | 高い(公益) |
課税 | 全所得課税と収益事業課税に区分 | 収益事業課税 |
税率 | 会社と同じ | 会社と同じ |
寄付金優遇 | 非営利型の場合、優遇あり | なし |
事業報告義務 | なし | 毎年度、所轄庁に提出 |
情報公開義務 | なし | あり |
支援プログラム | 少ない | 多い |
補助金 | NPO法人より少ない | 多い |
法人格のステップアップ | あり(公益認定制度) | あり(認定NPO法人制度) |
法人格の取消し | 休眠の場合、解散 | 認定取消しの場合、解散 |
設立の手続き、設立にかかる期間
一般社団法人とNPO法人では設立の手続きが異なります。
NPO法人は所轄庁の認証を受けて設立登記をする
非営利法人の中でも、NPO法人は、一般社団法人よりも公益性が高く求められることから、所轄庁の認証を受けて設立登記をする必要があります。
所轄庁の認証という手続きがあるため、設立にかかる期間も長くかかります。
一般社団法人の場合は3週間程度、NPO法人の場合は3~6か月程度です。
所轄庁というのは、都道府県や政令指定都市、権限を委譲された市区町村になります。
ホームページなどで、認証手続きにかかる手引きなどがありますので確認してみてください。
設立に必要な役員数、社員数の違い
設立するときに注意しなければならないことは、必要となる役員数、社員数がそれぞれ決まっているということです。
一般社団法人の場合は、役員数が理事1名、社員数が2名以上
NPO法人の場合は、役員数が理事3名以上、監事1名以上、社員数が10名以上
理事は社員、職員との兼務が可能で、監事は社員のみ兼務が可能です。
役員の親族規定に留意(NPO法人)
各役員について、配偶者もしくは三親等以内の親族が2人以上役員になることはできません。
また、当該役員ならびにその配偶者および三親等内の親族が、役員総数の1/3を超えることもできません。
つまり、役員が5人の場合は、配偶者および三親等内の親族が役員になることはできないということです。
役員の報酬を受けることができる者は役員総数の1/3以下(NPO法人)
役員の報酬は、役員総数の1/3以下の範囲内でしか受けることができません。
もし、役員が3人いたとしたら、役員報酬を受けることができるのは、3人中1人だけということです。
ただし、役員報酬と給与は別であるため、役員報酬を受けることはできなくても、社員として給与を受け取ることはできます。
設立時にかかる費用(公証人手数料、登録免許税)
設立時にかかる費用についても、一般社団法人とNPO法人ではかわってきます。
まず、一般社団法人の場合、公証役場にて定款(会社のルール)の認証を受けるにあたり公証人手数料として50,000円かかります。
また、法務局に設立の登記をするときに登録免許税として60,000円かかります。
一般社団法人を設立するときには、最低でも約110,000円の費用が発生します。
逆に、NPO法人の設立の場合は、定款認証を受ける必要がなく、登録免許税は非課税(0円)であるため、費用はかかりません。
設立にかかる費用面でいえば、一般社団法人よりもNPO法人のほうが安く設立できるということです。
ただし、定款の作成や認証の手続きを行政書士、登記の手続きを司法書士に依頼する場合には、別途料金がかかることになります。
NPO法人を設立する場合は法律で活動内容が決まっている
NPO法人を設立する場合、特定非営利活動に該当するものでなければならないと法律で決まっています。
類似した内容であれば問題ありませんので確認してみてください。
特定非営利活動は、下記の20種類です。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
NPO法人は社会的信用も高く、収入源も多様であることが特徴
一般社団法人に比べて、社会的な信用が高いことがNPO法人の特徴です。
NPO法人の場合は、公益を目的として、上記で挙げたような活動をしています。
あらかじめ、所轄庁(都道府県、市区町村)の認証を受けているので、社会的な信用が高いというのは間違いありません。
また、NPO法人は収入源も多様です。以下のようなものが収入源として考えられます。
- 会員からの会費
- 企業などからの寄付金
- 国や地方自治体からの助成金や補助金
- 行政機関や民間企業から委託を受けた事業にかかる資金 など
利益を追求せず社会貢献の活動をしているからこそ受ける寄付金など、株式会社とは異なる収入源があります。
また、助成金や補助金についても、対象となる種類が比較的多いことも、法人格を選ぶ際には重要なポイントになるかと思います。
NPO法人には事業報告義務がある
一般社団法人には、事業報告義務はありません。
しかし、NPO法人の場合は、毎年度、事業年度終了後3か月以内に所轄庁に事業報告をしなければなりません。
活動をしていなかったとしても、していなかった旨の報告が必要です。
設立手続きからその後の義務などを含めて考えると少し手間がかかる印象を受けるのがNPO法人です。
まとめ
本記事では、一般社団法人とNPO法人の違いについて、代表的なところをまとめました。
上記の表にまとめた両者の違いを確認し、非営利法人としてどちらの法人格を選択するのか参考にしていただければ幸いです。
当事務所でも、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などの設立手続きを支援しております。
法人格の選択で悩んでいる方やメリット、デメリットについて聞きたい方は、お気軽にご相談ください。
また、事業をしていると資金の調達は重要な課題となります。
国や地方自治体で出している補助金の申請や事業計画書作成の支援も行っておりますので、こちらも遠慮なくご相談ください。